【LADYLIKE】袖裏の秘密

袖の表地と裏地を合体させました。

裏地がついた服では、
裏地が表地とある程度は
同じ動きをしてくれるように
裏地と表地を縫い合わせます。
(でも裏地には「滑りをよくする」
という役目もあるので、
人間の体の方に合わせた動きも少しします。)
たいてい、表地と裏地の
縫い代どうしを縫い合わせます。
裏地の型紙は表地の型紙と
ほとんど同じ形なので、
縫い代も同じ場所にあるからです。

どころが。
今回作っているジャケットの袖では、
外袖と内袖を縫い合わせた2本の線が
表地と裏地でややずれた場所にあります。
表地の袖は、
ぱっと見には縫い目が見えないように
(ヨーロッパでは?縫い目が見えないことが
美しいとされています。)
2本とも腕の内側にあります。
つまり、外袖の幅は広く、
内袖の幅は狭いです。
一方、裏地の袖では外袖と内袖の幅はほぼ同じ。
だから外袖と内袖を縫い合わせた
2本の線のうち、
1本は表地と裏地の縫い代どうしを
縫い合わせることができるけれど、
もう1本は縫い代どうしを
縫い合わせることはできないのです。
でも1本しか縫い合わせないと、
袖の中で裏地が表地と
違う動きをしてしまいます。
(腕付け根のところと手首のところでも
表地と裏地がくっついているので
実際にはそれほど大きくずれたりは
しないと思いますが。)

さてどうするか。

答えは
「表地の縫い代のところで裏地に縫いつける」!
つまり、外袖と内袖を縫い合わせた
もう1本の線は
裏地の縫い代のないところで
裏地に縫いつけるのです。
もちろん、その縫い目は
袖の内側(裏地の表側)から見えてしまいます。
「でもわざわざ袖を裏返して見る人は
いないでしょ?」と先生。
確かに!
そして作る段階でも、
裏地の表側に見える針目が
なるべく小さくなるように縫います。
だから肉眼で見ても、
言われなければわからないと思います。
(写真の袖の中央に、上から下に向かって
点々と黒い縫い目があるのですが、
写真で見たらもっとわかりませんよね?)

そもそも、なぜ表地と裏地の縫い代が
異なる場所にあるのか。
表地は縫い目が外から見えないようにするため、
でしたが、
なぜ裏地の縫い目を同じところに作らないのか。

裏地は外袖と内袖の幅がほぼ同じ、
ということで合理的でありますが、
それだけではありません。

表地の袖は、
外袖の縫い目のところにアイロン処理を施して、
肘より下が前に振れています。
人間は「気をつけ」の姿勢をとると、
掌は肩の真下にはきません。
やや前方に位置しているのが自然な姿勢です。
その姿勢に袖の形を合わせて作っているのです。
しかし、アイロン処理というのは
普段はたて糸とよこ糸が
直交してできている布目を
熱と蒸気を十分に与えることによって
歪ませる操作です。
つまり、普段はそれほど高温でなく、
また湿度が大きく変わるので、
アイロン処理で作った形は
変わってしまう可能性があります。
そのカーブの位置に
裏地の縫い目を持ってくることで
固定させるのです。
縫い目の形は温度や湿度では
変わりませんものね。

縫い目というのは前後左右上下や
胴体と腕などのパーツの境目ですが、
そこに線があることで
視線を誘導するデザインとしての役目や
位置を固定させる役目もあるのです。
それをうまく使って
美しい服の形を作っているのが
デザイナー・
パタンナー(デザイナーのデザイン画から
型紙を作る人)・
ソーナー(縫い子さん)なのです。

いやー、しかし
「わざわざ袖を裏返して見る人は
いないでしょ?」
の発想には驚きです。
人が注目してないところに
仕掛けを作るということでは
まるでマジックです。
LL2016-02-03袖裏の秘密